凡人でもあり星でもある。「凡人の星になる」感想

これほど爽やかな凡人感を感じたのは初めてだ。凡人の星になるという本を読んだ。

著者は、言いたいことやまやまですというブログを書いているやまま氏だ。

ランチ会で会ったやまま氏

やまま氏とは、一ヶ月ほど前、コワーキングスペースのランチ会で知り合った。知り合った、といっても、同じテーブルで飯を食ったというだけで、その場では名前も聞かなかった。

そのランチ会で、どういう話の流れだったか忘れたが、私は「昼食としてコンビニの袋サラダにサバの缶詰をぶっ込んで食べる」というようなことを言った。やまま氏は、間髪入れず「あ!それ、わたしもよくやります!!」と言った。

私は、その「コンビニの袋サラダにサバの缶詰をぶっ込んで食べる」の話を、少しドヤ顔で言ったと思う。そういうドヤりかたもあるだろう。

それに対してやまま氏は、全くドヤ臭をさせずに「あ!それ、わたしもよくやります!!」と言ったのだった。

私のこの文章ではうまく伝わらないかもしれないけれど、やまま氏は、とにかくドヤっている匂いがしない。全くない。

ドヤ、という言葉だと少し伝わりづらいだろうか。背伸びしている感じがない、とか、強い主張をしない、という表現が良いかもしれない。

2019ブロガーズフェスティバル会場にて

その数週間後、3月24日に2019ブロガーズフェスティバルが開催された。そこに、やまま氏も参加していた。

一通りの講演が終わり、夕方から懇親会が開かれた。私は懇親会の場で、やまま氏を見つけて声をかけた。

その時点の私の中では、やまま氏の印象はとても薄かった。この人はどこかで会ったことのある人だ、と思ったのだけれど、どこで会ったのかが思い出せない。コワーキングスペースのランチ会と、この時点では記憶が紐付いていなかった。

私はそのブロガーズフェスティバルの演者としてライトニングトーク(5分間の短い講演)をしていたので、たぶんこの人は私を認識しているはずだ。だから、声をかけてみた。たぶんこの時も、私は少しドヤ顔をしていたと思う。

「お会いしたことありますよね。前回、どこで会いましたっけ?」

「ん、いや~どうでしょう。去年、私はスタッフをやったので、その時かもしれませんねウフフ」

そうだっけか。もっと最近だったような気がするのだけど。そう感じながら、少し話した。

「何を書いてるんですか?」

「私は雑記ブログです。」

「雑記ですか。収益は求めてるんですか?」

雑記ブログ、と聞いて、この人はブログ初心者なのだろうなと感じた。私は元アフィリエイターなので、収益化についての知識は多少ある。収入を得るならテーマを絞ったほうが良い、というような話をした。また、私はkindle本(自己出版)を出していたので、そういう方向でお金を得る道もある、と、これまたドヤ顔で話した。

ツイッターのアカウントを交換する。やまま氏はフォロワーが1000人ほどいた。この時点で、え、もしかしてこの人ってそこそこすごい人じゃね?と、初めて感じた。しかしやはり、凡人オーラしか感じなかった。

帰りの電車の中にて

ブロフェスでは、たくさんの人と知り合い、それらの人のtwitterアカウントをフォローした。少し新鮮になったタイムラインを見ていると、やまま氏がanchorでpodcastをしていることに気付いた。

↓これ
喋る!言いたいことやまやまです

すごくなさそうだけれど、頑張っている人なのだな、と感じた。あとで聴いてみよう、と、そのページをブックマークした。

数日後

数日後、そのブックマークを開き、彼女のpodcastを聴いた。言葉の使い方が独特でありながら滑らかで、一発で惹き込まれた。思わずツイートした。

この人は、今はすごくないかもしれないけど、あとで必ず才能が花開く人だろうな、と感じた。

その時に聴いたのは最新のpodcastであったので、このツイートをしたあと、一番古いものから順番に全部聴いた。この日は丸一日プログラムを書いていたのだけれど、ずっと彼女のpodcastを聴きながら作業した。

上記の「塩梅」もそうだが、「毎回毎回絆創膏をはがすわけにはいかないのです」 「失業手当をもらうためにドラゴンボールを集める」など、どうということもないことなのだけれど、私にとっては心にグッとくる言葉があふれていた。

話の内容としては、強い主張がなく、同じところをぐるぐると回っているような話が多いようにも思う。でも、非常に心地よい。

podcastの中で、コワーキングスペースのランチ会の話題に言及した回があり、それを聞いて初めて、やまま氏と最初に会ったのはあのランチ会だったのだ、と理解した。あの時の、あの物腰の柔らかそうだった人だ。

そのまま、やまま氏のツイッターを見に行ったら、このツイートを見つけた。

え・・・?

あんた!!!!

本出してんじゃねーか!!!!!!

心地良くpodcastを聞いていた私は、驚いたけれど、深く合点がいった。彼女の本業はブログなのだろうから、このpodcastは彼女にとっては副産物であるはずだ。その副産物のpodcastで、この豊富な語彙、滑らかな語り口である。まだ彼女の文章を読んだことはないけれど、周りが彼女を放っておかないだろうということは想像がついた。

あれだけ私がドヤっていたのに、この人はドヤらなかった。図らずも、凡人らしい慎ましさを強く感じた。

すぐに私は、この凡人の星になるをダウンロードして貪るように読んだ。

凡人の星になる 感想

ということで、凡人の星になるの感想。

この本は基本的にエッセイだ。難しいことを考えずに、読む時間を楽しむために読むというスタンスが最も読者自身の期待に沿うと思う。

月間PV10万を叩き出している著者のブログ運営方針を知るために読む、という読み方もアリだとは思う。けれど、そういうスタンスで読むのはもったいない、と感じる。

そもそも、ノウハウを得ようとして読み進めても、著者の言葉の使い方に心を奪われてしまうだろう。「(ブログ運営の勉強のために)オフ会に行った」という話には「ハンマーブロス」が出てくるし、「人気ブロガーに嫉妬した」という話では「サイドメニューごときで贖罪できるのでしょうか。」という言い回しが趣深い。「食レポの書き方」の「梅干し跡地」も独特。とにかく、彼女の色が全面に出た文章になっている。

率直に言うと、大したことは書いていないようにも思う。しかしそもそもエッセイというのは、大したことでもないことを楽しく書くものなのだろう。その意味で、この本はエッセイとして秀逸だ。どうということもないことがらを、楽しい文章に昇華させている。

この本に書いてあることは、大したことのないことだ。まさに凡人の日常。「凡人の星になる」という書名に偽りはない。

大したことでもないことしか書いていない、と感じる一方、卑屈な色も一切ない。文章としては卑屈っぽい言い回しもあるのだけれど、嫌な卑屈臭が全くない。スルスルと読める。

この独特かつ魅力的な文章を書くことができているという点で、やまま氏は凡人ではない。しかし、書いてあることは確かに凡人の日常だ。

私も雑記ブログを書こうかな

私もアフィリエイトブロガーだったが、収入が停滞し、3年ほど前に書くのをやめてしまった。続けるということは難しい。そんな私もこの本を読んで、雑記ブログを書こうかな、という気持ちになった。

雑記ブログというのは、アフィリエイター視点では最悪解だ。収入を得ることを目的とするなら、私は絶対に勧めない。しかし、やまま氏は淡々と雑記を書き続け、こうして出版まで漕ぎ着けたのだろう。凡人であるやまま氏が、地道に記事を積み上げて突破したのだ。お金にはなっていないのだろうけれど、こういう成功の仕方もあるのだ、と、目からウロコな気持ちである。

やまま氏は、凡人の道も突き抜ければここまで行ける、という事例を打ち立ててくれた。この本はたくさんの凡人に勇気を与えるだろう。私も気力をもらった。

なにより、とびきり楽しい文章を読むことができた。

私は、もう絶対、彼女にドヤ顔しない。私も、彼女を目標の星としよう。

凡人の星になる

言いたいことやまやまです(やまま氏のブログ)
やまま氏twitter

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