SPCとはどんなものか その2 不動産証券化(ド素人向け)
前回、「SPCとはどんなものか」というお題でSPCを使った売掛金の証券化について書いた。
ついでに、不動産の証券化についても書こうと思う。
なお、このページは SPCとはどんなものか の知識を前提として書くので、
良く知らない人はそっちから読んで下さい。
ある賃貸業を営んでいる会社C社があったとする。
C社は、ある非常に良い物件を見つけ、それを買いたいと思ったが、
手持ちの資金が無かった。
銀行からの融資は受けられそうであるが、金額的には十分ではない。
そこで、現在持っている物件Aを売ることにした。
だが、その売りたい物件は年間10億円程度の利益を出しており、
そこから考えると売値は100億円程度と予想され、高額なので、
まともに探したのでは買い手がいつ現れるかわからない。
そこで、SPCを使って売ることにした。
C社は、SPCであるX社を作る。
X社は、下記のような宣伝文句で出資者を募る。
「ウチはC社から物件Aを100億円で買い、運営して賃貸収入を得る予定です。
賃貸による利益は年間10億円程度になる予定で、
ウチ(X社自身)の運営費を年間1億円引いた後、残った利益9億円は全て出資者に分配します。
出資しませんか?」
出資者が100億円分集まったら、X社はC社から物件Aを買い、運営する。
X社は物件がある限り運営し、毎年出資者に9億円を分配する。
※なお、SPCであるX社は税金が極めて安くなるように法整備がされている。
ここまででおしまい。
前回の売掛金に絡むSPCは一連の取引が終わったら解散したが、
今回のSPCであるX社は物件Aを長期間運営していく。
これを、不動産の証券化という。
出資者は、SPCであるX社への出資証券を、買い手が付けばいつでも売り渡せる。
出資証券の売買は現物不動産よりもずっと簡単なので、
この仕組みを「不動産流動化」と言ったりもする。
今回のSPCであるX社を作るメリットは、
C社が、売りにくい巨額な資産を売れた、ということである。
また、出資者は、C社に出資するよりも、リスクが明確な分出資しやすい。
(C社に出資するのならばC社のあらゆる事業を精査しなければならないが、
X社に出資するのならば、物件Aのみを考えれば良い。)
「JREIT」というのを知っている人も多いと思うが、
JREITは、この例のX社みたいなもんである。
詳しいことを知りたい方はこの本を読むと良い。
入門書でありながら濃い内容で、素晴らしい。
実践なるほどわかる!不動産証券化バイブル |
以上!
---追記---
SPCについては、下記2エントリも書いています。
SPCとはどんなものか (債権流動化)(ド素人向け)
SPCとはどんなものか その3 開発型SPC(ド素人向け)
出資した投資期間が満了時になったらどうするのか?資金を払い戻しなければならないのではないか?
通常2~5年間の期間を設けている。年2回の利払いを受けて、満期後に出資したお金が投資家の元に帰っ
てくるはずです。
基準価格が、満期時に下落していても、投資家は劣後出資者でありますので、基準価格が、一定の目減り
額までは保証されている。それを割り込む目減り額が発生すると、満期時に返還されるお金が減るのではない
でしょう? 逆に基準価格が満期時、上昇していれば満期時に返還されるお金は増えるのではないでしょうか?
コメントありがとうございます!
> 出資した投資期間が満了時になったらどうするのか?資金を払い戻しなければならないのではないか?
> 通常2~5年間の期間を設けている。年2回の利払いを受けて、満期後に出資したお金が投資家の元に帰ってくるはずです。
そもそも満期という概念を持たせるかどうかは、そのSPCのあり方によって様々な形があると思います。
この記事では、期間の定めのない出資という暗黙の前提で記述しました。
「ド素人さん向け」ですので、単純化しています。ご容赦ください。
> 基準価格が、満期時に下落していても、投資家は劣後出資者でありますので、基準価格が、一定の目減り
>額までは保証されている。それを割り込む目減り額が発生すると、満期時に返還されるお金が減るのではない
>でしょう? 逆に基準価格が満期時、上昇していれば満期時に返還されるお金は増えるのではないでしょうか?
そもそも、この記事では出資証券の価格変動を考慮しておらず、同一の価値のまま推移するというイメージで記述しております。
それも「ド素人さん向け」ということでの単純化です。
私も、素人に毛が生えた程度ですので・・・、すいません。
でも、素人側の人間だからこそ伝えられるものもあるだろうと思って書いております。
ご指摘感謝しておりますが、そのような事情ですので、記述はこのままにしたいと思います。
ありがとうございました。