地上げとは具体的にどんな商売か

「地上げ」とは、建物の入居者に立ち退いてもらう交渉をすることだが、
その全体観を説明する。

バブル期の強引な地上げで、暴力団絡みのイメージが定着してしまっていると思うが、
一般的に行われている、合法的な地上げについて書く。

まず、地上げの典型的なターゲットは、
立地条件が良いがボロボロのビルに、低い入居率(例えば50%)で複数の
(例えば10~20テナントor家族)で入居者がおり、
しかもその入居者は区分所有者(借りてるのではなく、部屋を買って住んでいるor営業しているということ)で、
ビル経営としては赤字、というシチュエーションである。

このような状況だと、家主としては入居率を上げたいが、
ボロボロのビルなのでなかなか入居している人が現れない。
儲かりそうにないので、普通の賃貸マンションを経営するような会社も、
買ってくれようとはしない。
ビルを取り壊して新しいビルを建てようにも、入居者がいるので取り壊せない。

このような場合に、地上げをする企業が活躍する。

地上げ会社は、まずそのボロボロのビルの土地と、
建物の買える部分を土地所有者から買い取る。

次に、地上げ会社は入居者に出て行ってもらうように、立ち退き交渉をする。
※立ち退き交渉は土地・ビルの持ち主じゃないとできないので、
 地上げ企業は、必ず対象の土地・ビルを買う必要がある。
ここが地上げ会社の腕の見せ所である。

地上げ会社は、入居者と交渉し、お金を渡して出て行ってもらう。
基本的に、収益の改善が見込めないボロボロのビルの立ち退き交渉は、
揉めて裁判沙汰になったとしても、きちんと手続きすれば
「入居者は出ていくこと。但し、地上げ企業は○○円を入居者に支払うこと」
という感じに、お金で解決するような判決が出ることがほとんどである。

地上げ会社は、そういった裁判手続きに精通した上で、
裁判に持っていく前に、直接、低コストで出ていってもらうように交渉する。
(なお、立ち退きの際に入居者に支払われる金額の相場は、
 商売をしているテナントの場合で、
 転居のための実費+区分所有建物の価値+2~3年分の利益、
 ということが多いらしい。
 住居用の場合は、
 転居のための実費+転居先の2~3年分の家賃、らしい。)

で、全員出て行ってもらったら、ビルを取り壊したあとにその土地を売る。
ボロボロのビルが建っていた時と違い、
新しいビルを建てられるので、入居者を追い出して更地にした時点で土地の価値は上がる。
地上げ会社は、その利幅で利益を出す。

なお、狭い土地よりも広い土地の方が面積あたりの単価は上昇するので、
こういったボロボロのビルが他に隣接しているようであれば、
両方買って広い更地にすると、更に儲かる。

ついでに、私の経験から、立ち退きを迫られている人へアドバイス。

まともな地上げ会社との交渉になった場合、上に書いた通り、
裁判になれば立ち退くことになる可能性が高い。
その意味では、まともな地上げ会社のターゲットになった場合、
ターゲットになった時点で、立ち退くことになるのは確定的である。
裁判になれば弁護士費用もかかるので、結局損である。

地上げ企業は、極力早く全員を立ち退かせたい、という意識がある。
なので、一番最初に立ち退く人と、一番最後に立ち退く人に支払う金額が多くなりがちである。

なぜ一番最初に立ち退く人に多くのお金を支払うのかというと、
誰か一人立ち退くと、雪崩を打ったようにどんどん立ち退きが進むことが多いから。

そして、一番最後に立ち退く人に支払う金額が多くなるのは、
金利負担を気にするからである。
多くの場合、立ち退きのプロジェクトには銀行から数億~数十億の融資を受けており、
立ち退き企業はその利息を毎月払っている。
例えば、10億円を金利5%で借りていれば一ヵ月の利息は約400万円になる。
一番最後の一人の交渉ために毎月百万円単位の利息を払うくらいなら、
多少多くお金を積んでも早く出ていって欲しいと思うのが普通である。

但し、ゴネ過ぎて裁判になったら、上記の通り結局損をするので注意。
交渉の仕方としては、多少高めの(引っ越し先家賃4年分程度かな?)の金額を提示して、
「この金額を払ってくれたら、一週間以内に出ていく」
というような言い方をするのがベストと思われる。

また、全ての交渉に言えることだが、交渉の内容は動画撮影等をして記録しておくこと。
先方には、堂々と「一応、ビデオ撮っときますね」と言っちゃう方が良い。
ある程度の信頼関係があった方が、相手もお金を出してくれやすい。

以上。

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