政治家の殺し方 中田宏 感想

元横浜市長、中田宏氏の本。
市政の改革を行い、抵抗する勢力から根も葉もない噂を流され、週刊誌に書き立てられていった経緯を綴っている。

政治家の殺し方

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著者:中田宏
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「根も葉もない」のかどうかは人によって考えが違うだろうが、裁判では中田氏の完全勝訴に終わっているので、私としては中田氏の主張が真実だと思う。

改革をすれば利権を排除することになり、利権を排除するとなれば利権を持っている人たちからの反発を受ける。
それが、一連の週刊誌で報じられた「女性問題」等だということだ。
「女性問題」についても、もちろん、裁判で中田氏の全面勝訴が確定している。
しかも、その裁判には相手の女性は全く出廷しなかったとのこと。

既得権益者が根も葉もない怪文書を作ってバラ撒き、週刊誌にもリークする。
週刊誌は何の裏付け取材もせずに、そのリークを書き立てる。
こうして、その問題について話題になっている状態を作る。
そして、話題になっている事実に基づき、市議会などで質問し、市政を停滞させ、改革を阻む。
そういった、改革に伴う血生臭い、泥臭い部分を丹念に書いてある。

思うことは、やはり週刊誌は売れればいいと思っている人が作っているということだ。
そこには報道の高尚な理念などない。
事実か否かをチェックする気もないし、倫理的・道徳的な意味で報道すべきことかどうかを判断する人もいない。
ただひたすらに、事実かどうかなどお構いなしに過激な表現を求めていくのみなのだ。

良いことも、うまく曲解して過激な表現に落とし込む。

公平な報道で基本な両論併記の考え方も、全く実現されていない。
精々、醜聞を長々と書いた後に「中田氏は否定している」と一言書くぐらいで、その否定の根拠の細かい内容は何も書かない。

しかし、語りつくされたことだが、それが通用する時代ももう終わりだろう。
この10年で、ウエブサイトが産まれ、ブログが産まれ、Twitterが産まれ、公的な人たち本人から生の声を聞くことができるようになり、それを実際に聞く人たちもどんどん増えている。
私がこの本を買ったのも、Twitterで中田氏のツイートが誰かにRTされたものを読んだのがきっかけだ。
中田氏に特別注目していなかった私でも、週刊誌の報道の仕方に漠然とした疑問を持ち、こうやってこの本にたどり着いて読むことができた。

今回私は、長い間報道関係者に愛用されてきた、情報を恣意的に取捨選択して、自分の都合のいいように報じるスキームは崩れてきているのを、自分の身をもって実感できた。
それはとても良いことだ。
今後は、たくさんの人が一次情報に近い情報を得て、それを自分の頭で考えて行動するようになるだろう。

蛇足だが、そういえば原発問題で世論が真っ二つに割れているのも好例かもしれない。
インターネット普及前なら、一般大衆はテレビによって曲げられて情報にしかリーチできず、99%の人が原発擁護となっていたのかもしれない。
それが、今は推進・反対で見事に2つに割れているようだ。
これは、インターネットが無い時代にはあり得ない現象だっただろう。

もう、既存のマスコミの存在価値は限りなく薄くなった。
本気で考え、議論の軸を与えてくれるような報道にならないと、既存マスコミは生きていけないだろう。

そういえば、これを書いている現在は橋下徹氏が大阪市長選挙に立候補して平松邦夫氏と舌戦を繰り広げている。
そしてそのタイミングに合わせて、週刊誌が橋下徹氏の産みの父親がヤクザであることを盛んに報道している。
この状況は、中田氏の置かれていた状況と重なる。
週刊誌がまた同じことを繰り返している、としか思えない。
この本を読んだ今となっては、週刊誌のこの反応は既得権益者の反発が強いことを物語っており、橋下氏の改革の実行力が本物だという裏づけのように思える。

既存マスコミに疑問を持っている人は必読。
あと、大阪市長選挙に興味を持っている人も必読。

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