白い鴉

白い鴉
著者:新堂冬樹
価格:650円(税込、送料込)
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新堂冬樹の最新刊ということで、早速読んでみた。
詐欺師の話。

とにかくぐいぐい引き込まれる。
どんどん先を読みたくなる。
こないだ勝間和代との対談を見たが、新堂冬樹は理論で小説を書く人のようだった。
この本も、考え抜かれた技法が散りばめられているのだと思う。

様々な詐欺の叙述を通して、だんだんと詐欺師の生い立ちや人格が明らかになってくる。
彼は、自分の大切な人のために詐欺で金を稼ぎ、手に入れた金を使って、大切な人を守った。
そこで物語は終わる。

読んでいて時間を忘れる本だった。
私はいつも通勤電車の中で本を読むのだが、
ぎゅうぎゅうの満員電車の中でも無理矢理読みたくなる本であった。

ただ、全部読み終わって思い返してみると、よくわからないところがある。
新堂冬樹は理論派だと思うので、この本で最も伝えたい主題みたいなのがあるんじゃないかと思うのだが、それがなんなのかわからない。

この本の主人公は、詐欺を重ねて金を稼ぎ、大切な人を守った。
だが、騙された人には救いがない。
主人公が騙した相手は、悪人もいたが善人もいた。
その善人たちを、主人公は、金を騙し取るだけではなく、わざわざより深い不幸に落とし込むように策を練って騙す。
なぜ、より深い不幸に落とし込むのか、その理由は最後まで明らかにされない。

また、主人公の大切な人もまた善人であり、騙し取った金を貰って一時は助けられたところで、その後は罪悪感に苛まれ続けるだろう。

結局、登場人物で幸せになった人は一人もいないように思う。
それを思うと、なんだか悲しくる。
読んでいる間は貪るように読んだが、読後感は悲しい気分だ。
じゃあ、新堂冬樹は何を伝えたかったのだろう?

はっきりわからないけど、悲しい生い立ちに生まれた主人公がのたうちまわって形の上では大切な人を助けたけれど、結局は幸せには出来なかった。そしてみんな不幸になった。
その虚しさしみじみと感じさせるための本だったのかもしれない。

やや消化不良だが、読んだ事に一片の悔いも無し。
いろいろな人に読ませて感想を聞いてみたくなる本であった。

白い鴉

白い鴉
著者:新堂冬樹
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