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香山リカが、最近増えている「仕事中にだけ鬱になる人」について論じている本。
全体的に言って、「仕事中にだけ鬱になる人」にかなり批判的、というか、そのような人に関わって振り回されてしまう周りの人こそが被害者だ、という視点で書かれている。
極めて学術的に書かれているとはいえ、精神科医という立場でこの本を書くのは相当勇気が必要だったろう。
よくぞここまで、ありのまま、思うままを書いたな、という気がする。
偉い。

文中に登場する患者は、例えば、鬱での休職期間中に一ヶ月間たっぷりとハワイ旅行に行っちゃうような人だ。
そのような患者には、
「私は社会的に不当な扱いを受けて鬱になったのだ。だから、休職期間は目一杯遊んで休みを楽しんでもいいのだ」
という思考があるという。
香山リカは、それについて、同僚が
「なぜあいつは長々と遊んでいるのに、私は苦しく働かなければならないのだ」
と思い、またそのように思う自分を責めて更に苦しむ、という悪循環に切り込んで行く。

学術的にはこのような状況が発生する事について既に研究が進んでおり、「未熟型うつ病」という概念があるという。
つまりは患者が社会人として未熟であるがゆえに苦しみ、鬱になるという考え方だ。

また、自己愛的であるがゆえに、直近の苦しみから逃避するために「うつ的」である自分をクローズアップし、休職すべしとの診断書をゲットしている、という現象も認識しているという。

これらの考え方は、鬱で休職する人が発生した職場に残され、過負荷に苦しむ人たちの頭をかすめている。
この本はそれらを正面から論述し、そのようなズルい人達が存在している事を明確に認めている。
その意味では、そのようなズルい人達の周辺で悩んでいる人たちの溜飲を下げてくれるだろう。

しかし、明示的な解決策は提示されておらず、問題の解消にはまだまだ時間がかかりそうだ。

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