SPCとはどんなものか (債権流動化)(ド素人向け)

「SPC(special purpose company)」について、ド素人の私が簡単に説明する。
なお、「特別目的会社(TMK)」、「SPV(Special Purpose Vehicle)」、「SPE(Special Purpose Entity)」なんかも、
ド素人的には同じものだと思っておいて良いと思う。
また、SPCと売掛金等を使った資金調達の仕組みを「債権流動化」とか「債権証券化」とかいう。

SPCとは、簡単に言えば資金調達に使う手段の一つだ。

まず、A社はZ社というSPCを作る。簡単に言えばペーパーカンパニーだ。
A社はZ社に、B社向けの100億円の売掛金を、割り引いて(例えば89億円で)売り渡す。
これによりA社は、いくらか割り引かれたものの、資金を調達することができた。
Z社は、売掛金の期限が到来したら、B社から売掛金を回収する。
Z社は、Z社への出資者に、B社からの回収したお金を配当して解散する。

上記5行で記述した取引が、SPCが絡む取引の基本。
なぜこんなことをするのかを、下記で説明する。

例として、A社が、B社向けの売掛金を100億円持っていたとする。
A社の業績は悪く、潰れそうなのでなんとか資金調達できないかと考えている。
B社の業績は好調であり、売掛金の回収は問題無さそうである。
だが、B社向けの売掛金の支払日はまだ先で、すぐには入金されない。
多少割り引いてもいいからB社からすぐに支払ってもらおうとしたが、
100億円は巨額なので、B社としての資金繰りも簡単ではなく、
そもそもすぐ支払ってあげる義理もないので、拒否された。
銀行からの借り入れも、今のA社の業績だとこれ以上できない。
当然、資本注入も難しい。

SPC説明その1

SPC説明その1

このような状況で、SPCは威力を発揮する。

まず、A社がZ社というSPCを作る。
Z社は、「B社の売掛金を管理・回収することだけを目的に設立された会社」である。
次に、Z社は、Z社への出資者を募る。
誘い文句は次の通りである。

「ウチはB社の売掛金を管理・回収するだけの会社です。
 回収したら出資者に配当して解散します。
 出資しませんか?」

Z社への出資金が90億円になったら、A社からZ社へ、B社向けの売掛金を89億円で売る。
(残りの1億円はZ社自体の運営に使う)
この際、B社からZ社への支払いは、本来の100億円ではなく、95億円ぐらいに割り引いてあげる。
(B社にもメリットが無いと、支払先をA社からZ社には変更してくれないので。)

SPC説明その2

SPC説明その2

Z社は、売掛金の期限が到来したら、B社から95億円の支払いを受ける。

Z社は、回収した95億円を、Z社の出資者に配当し、解散する。
出資者は90億円出資して95億円貰ったので、5億円の儲け。

SPC説明その3

SPC説明その3

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以上が、SPCの取引の概略。
SPCの良いところをまとめると以下の通り。

・ダメな会社(上記例ではA社)でも、良い資産を持っていれば現金化できる。

・SPCへの出資者は一人でなくても、小口出資者が多数いるような形でも良いので、普通なら買い手がなかなか現れないような高額な資産でも現金化しやすい。

・リスクが明確になる。
 上記例では、もしA社に出資するなら出資者はA社のあらゆる事業について検討する必要があるが、
 SPCを作ることにより、出資者はB社宛の売掛金のリスクのみを考えれば良くなった。

但し、SPCには下記のような注意点もある。
・Z社はいわゆるペーパーカンパニーなので、手続き上は売掛金を譲渡しても、
 裁判で「その取引は無効」と言われることがある。
 (A社とZ社が本当に存在する別々の会社であるようにZ社を作ることを、
  もしA社が倒産してもZ社には影響が及ばない、という意味を込めて「倒産隔離」という。
  この倒産隔離を確実に行うことが肝心だが、その詳細は難しいのでここでは触れない。
  というか私も理解できていない。)

なお、ここではわかりやすいようにA社を「今にも倒産しそうな会社」として書いたが、
必ずしも倒産しそうな会社ばかりが使っているわけではない。
というか、健全な会社でも普通にSPCは使われる。

上記A社の場合、100億円の売掛金を売って現金89億円を手に入れたわけだが、
もしA社が健全な会社で、銀行から同じ89億円を借りることができたとしても、
売掛金の割引額と借入金の利払い額を比べて、借入金の利払い額の方が多ければ
(つまり、利払い額が11億円より多ければ)、SPCを使った方が得ということになる。

以上。
ついでに、本の紹介。
「女子大生会計士の事件簿」という本で、
5章あるうちの1つでSPCが取り上げられている。
有名な、会計絡みの軽い小説。
会計を知らなくてもスラスラ読めるし、
楽天だと中古は大抵150円(+送料)くらいで売られてるのでお勧め。

女子大生会計士の事件簿

女子大生会計士の事件簿
著者:山田真哉
価格:998円(税込、送料込)
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なお、これは私のメモ書き程度のものなので、
完璧に正しい知識が必要な人は有識者に聞いて下さい。
(自分では合ってると思ってるけど。。。)

---追記---
不動産証券化 と 開発型SPC についても書きました。
SPCとはどんなものか その2 不動産証券化(ド素人向け)
SPCとはどんなものか その3 開発型SPC(ド素人向け)

SPCとはどんなものか (債権流動化)(ド素人向け)” に対して8件のコメントがあります。

  1. TAKA より:

    SPCについて、こんな、わかりやすい説明初めてみた。。。

  2. sasaki より:

    シンプルで奥深い理解だから出来る簡潔な整理。素晴らしいです。

  3. たけ より:

    。。。おまえは、天才か、、、

  4. あいら より:

    ほんとにわかりやすくて助かりました。
    会社では誰にも聞けないので感謝です!

  5. maradona より:

    わかりやすい説明で楽しく読ませていただきました。
    これからも色々ど素人向けに発信を続けて頂きたく、
    よろしくお願いいたします。

  6. 匿名 より:

    とっても分かり易かったです!ド素人の状態なのに会社からSPC立ち上げの際の届出等を調べて!と言われ、そもそもSPCってなんぞ?状態でしたがやっと仕組みが理解できました。ありがたかったです。

  7. 匿名 より:

    a社が当座の資金を工面するためにSPCを作るよりも、はじめから、売掛金を95億に割引くので期限前支払いしてくれませんか?の方がコストが安くないですか?

  8. admin より:

    仰る通り、「売掛金を95億に割引くので期限前支払いしてくれませんか?」と言う方が、コストは安いです。
    その条件を債務者が飲んでくれるのであれば、当然ながらその方が良いことになります。

    ただ、一般的に95億円は大きな金額なので、支払日を早める条件を、債務者が飲んでくれる確率は低いです。
    巨額な資金を小口にすることで早期に調達可能にするということが、SPCを使う大きな意義です。

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